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vol.147

ヴォルフガング・ザイエール

Wolfgang Seierl

​「Dividuum / Caput mortuum」

2023.7.15(土) - 7.30(日)

Open : 13:00 - 19:00

Closed : 火曜・水曜

作家在廊日:7.15(土), 16(日)

私の現在の作品のテーマは「Dividuum」です。「ディヴィデュアル」という言葉は、紀元1100年頃の神学者ポワチエのギルベルトにさかのぼり、分割できるものを表します。それは、個と全体の二分法を打ち破り、個々は分散し、横断的に分布し、個々の事物を交差し結びつける抽象的な線の描画の中で現れます。今日でも最近の資本主義の変革を表現するために使用されますが、むしろディヴィデュアルの視点によって、権威、政党、前衛による統一された主体の表象に依存することなく、分子革命や関連する変化のプロセスを発見することができます。

 

またシリーズ「Caput mortuum」は、ラテン語で「頭蓋骨」を意味し、同名の鉄硫酸塩から作られる顔料を指しています。これは凝固した血の色に似ており、私の作品に長い間使用されてきました。このシリーズは、死と同時に人間の生命との対峙であります。この作品における文学的・哲学的な思考は、より深い意図をあらわにします。フリードリッヒ・ニーチェの第二のディオニューソス讃歌で、"輝く茶色"は色彩を、"砂漠"のイメージはその意味を表しています。ニーチェによって描かれる死のイメージは曖昧です:火と光、そして砂。人間は砂漠の中のcaput mortuumです。私の作品には、もう一つの中心的な要素があります。それは火とその痕跡、つまり焼け跡です。ゲーテは『色彩論』で書いているように、火は色の顔料の強度を増し、黒も燃焼によって作られます。実際に、傷、怪我、焼け跡を思わせる絵画的要素は、強度とエネルギーを伝えています。

 

Wolfgang Seierl

Caput mortmort_240x200.jpg

「分子革命」というワードと、ヴォルフガング・ザイエールの思想や表現活動を照らし合わせる時、彼は絵画制作と現代音楽を通じて小さな革命を続けてきているといえる。最も小さく強い変革は、個々の主体の解放やエンパワーメントと、自己の中にある。それは外部によって脅かされるものではなく、深い思索によって強められ、分子レベルの小さく美しい革命を起こす。今回、「ディヴィディウム」「カプット・モルチューム」の 2つのシリーズはラテン語で「分割」「頭蓋骨」の意味をもつ。透き通った白い円は骨であり、円相であり、惑星であり、分子構造のようでもある。小さな世界と大きな世界をたゆたいながら震え、行き交う無限のレイヤーは画面を越えて深く空間に広がり、例えれば音の世界のようにボーダーを持たずに存在する意識のようでもある。COVID-19によって社会的分断を余儀なくされながらも、世界が意識を共有したこの数年、彼の作品はより意識世界を通じて繋がりつつあるように思う。

 

正木なお

ヴォルフガング・ザイエール

Wolfgang Seierl

1955年、ウィーン生まれ。ウィーン、ザルツブルグにて絵画、哲学、ギター,音楽学や作曲を学ぶ。音楽および視覚芸術の分野における芸術活動、キュレーター活動を行っている。画家としてのザイエールは、個展、グループ展をオーストリア、ドイツ、ベルギー、フランスをはじめヨーロッパ各地や、日本、台湾、アメリカにて発表している。またパフォーマンス、コンサートも国内外で多数出演するほか、音楽と美術両方の分野において多くの賞を受けている。

 

1955 オーストリア、ウィーンに生まれる

1973 美術や音楽、演劇をザルツブルク・モーツァルテウム大学で学ぶ。

1987 ベルリン(1987)、パリ(1988、1992、1995)、ニューヨーク(1989)、ブダペスト(1990)、クラクフ(1992/93)、ヴァージニアセンター・フォー・ザ・クリエイティブ・アーツ/USA(1993)などで、各国の助成を受けて活動する。

1991 ヴェルフェン(オーストリア)の国際絵画シンポジウムに招待される。

ザルツブルグ空港の外壁にW.A.モーツァルトに関連した絵画の制作を依頼される。

1995 オーストリアの聖ランブレヒト修道院でのシンポジウムに招待される。

1997 ザルツブルクにて壁画制作の依頼を受ける。

1999/2000 フランクフルト(ドイツ)にて活動するための助成金を受ける。

2003 ポートフォリオ「Le Projecteur」をGert Jonkeと共作(Éditions Akié Arichi、パリ)。

2004 インドを訪れる

2005 ポーランド・ワルシャワで活動するための助成金を受ける。

2006 日本を訪れる

2007 アトリエ凹凸(西宮)にてレジデンス。

2009 リトアニア・ヴィリニュスでの活動に対する助成、日本への渡航

2010 ウィンターグリーンフェスティバルにてアーティストインレジデンス(ヴァージニア/USA)

    vol.26 ヴォルフガング ザイエール Wolfgang Seierl, Gallery NAO MASAKI

2012 vol.49 WOLFGANG SEIERL展, Gallery NAO MASAKI

2017 vol.103 Painting/ヴォルフガング ザイエール WOLFGANG SEIERL, Gallery NAO MASAKI

2018 ジュリアン・シュッティングと共に紙作品とオフセットプリント/アーティストブック「Von Schüssen die Küsse」(Edition Thurnhof/Toni Kurz)を発表。

2021 ポートフォリオ「Le circuit des évidences」を出版

 

[パブリックコレクション]

アルベルティーナ(ウィーン)、ウィーン美術アカデミー、ニーダーエスタライヒ州立美術館(ザンクト・ペルテン)、カロリノ・アウグステウム美術館(ザルツブルク)、ルペルティナム(ザルツブルク)、ウィーン、ザルツブルク、クラーゲンフルト市(オーストリア)、クンストハウスネクサス(ザールフェルデン)、キセリ・ムゼウム(ブダペスト、ハンガリー)、ウンナ市(ドイツ)、ニューヨーク公立図書館(ニューヨーク)、バージニア創造芸術センター(アマースト、アメリカ)、サムルング・ハルトマン(D/A)a.o.

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