Art Fair Tokyo 2022

2022.3.11 - 3.13

"ALIVE"

2018年、80歳を目前に逝去した、関西を中心に立ち上がった戦後の美術運動、「具体美術協会」のメンバーとしても知られる堀尾貞治(1939-2018)は、この世の真理を「あたりまえのこと」とし、日々の芸術活動を通じて追い求めました。

 

今回は、生きる痕跡として生まれた堀尾貞治の作品、毎日一色のアクリル絵の具チューブ一本を使い、塗り重ねる「色塗り」シリーズ、そして、2016年に堀尾の「1000号の作品が作りたい」というエネルギッシュな発想をもとに仲間たちの協力の下、廃材パネルや端材に実験的な行為を用い、即興的に描いた千点「千GO千点物語」より。そして、今まさにこの社会の中でもがき、気付き、進化し、生き続ける二人の現代アーティスト作品が対峙します。

 

近年注目を浴びる現代書家ハシグチリンタロウ(1985-)は、10代の頃PUNKに出会い、創作活動の原点とし、自らの肩書を「書き+灯す人=Wlighter」と名乗ります。1960年代に台頭した井上有一の「書は万人の芸術」という考えに触発され「日常を生きる為のエネルギー」として作品をとらえ、日々生活の中で閃くインスピレーションや断片的な言葉を大学ノートに書き付けながら展開するその手法は、堀尾貞治のらくがき帳に綴られた作品の源泉となる日常から生まれる眼差しと重なります。そして既存の書道具ではなく、自らの熱量を受け止める制作方法として身近なタオルを選び、身体渾然としたその作品制作スタイルも、堀尾が戦後の混沌の中、創作を通し真の価値観を見出し続ける姿勢を想起させます。今回は「書く」という行為を通して考察するハシグチの制作姿勢が見られる作品、時間軸の中で言葉の持つ意味合いを模倣し、破壊し、再生する「CRYTSTAL」、そして現代社会を中心に未来と古代を行き来する「MYNORMAKER」シリーズは、文字を書き記す行為や人々の存在を想像しながら思考の原点をたどるような作品であり、人間という生身の存在の持つ本来の力や生き様を強く肯定しているようです。

 

昨年2021年に奥能登国際芸術祭に選出された美術家・佐藤貢は、20代に世界各地を放浪した後、精神的崩壊を経験し、和歌山の海辺にたどり着き、打ち捨てられたゴミを用い(漂流物と彼は呼ぶ)ながら制作を続けるうちに「自らが漂流物であることに気づいた」といいます。(現在三重県菰野在住)作品制作を通し、現代社会に漂泊した事物や混沌を自らの中に見出すように内面と向かい合う佐藤貢の作品群は静謐でありながら、強い磁場と圧倒的な存在感を放ちます。堀尾貞治も「色塗り」シリーズの支持体として打ち捨てられたゴミ捨場や路上から収集してきたガラクタや廃品を多く用いており、それは美術の根底にもある価値転換やこの社会の通念をひっくり返す底力にも通じます。今回、佐藤貢は108の十字架から構成される「108Crosses」を中心に繰り広げます。108という数字は東洋の仏教的思想では煩悩の数を表し、十字架は西洋キリスト教における贖罪の象徴に重なります。宗教的意味合いは排除しながらも西洋と東洋を越えた祈りや観念を喚起する作品には、混沌とした時代の中に真の価値観を見出す祈りへと繋がっていくようです。

 

時代を連れながら重なる1939年から2022年、人間の混沌をみつめ、昇華させる芸術行為を展開する3人のアーティストの生きる様を感じていただけましたら幸いです。

Gallery NAO MASAKI  正木なお

出展作家:堀尾貞治 Sadaharu Horio / 佐藤貢 Mitsugu Sato / ハシグチリンタロウ Lintalow Hashiguchi

会期:2022年3月11日(金) ー 3月13日(日) 

会場:有楽町東京国際フォーラム ホールE booth:N032