vol.139
堀尾昭子展
世界を組む
2022.7.23(土) - 8.7(日)
Open : 13:00 - 19:00
Closed : 火曜・水曜
堀尾昭子は1937年日中戦争の始まる年に徳島県徳島市に生を受け、太平洋戦争の戦中戦後時代に多感な少女時代を農村で送ります。そうした複雑な時代体験や美術教育ではなく本の世界にある挿絵などから受けた感覚はその後の堀尾昭子の芸術表現に対する姿勢にも影響を及ぼします。1962年25歳より美術制作を始めて具体美術に出会い、具体美術協会会員[1968年~1972年解散時]として様々な時代を構築する芸術家と交流を深めます。協会解散後も85歳を迎える今日まで、日常の雑事や社会への参加などを大切にしながら、日々の制作の中での美への追求や自身の中の発見や驚き、喜びは、同時にこの世界の普遍的均衡の希求や祈りと重なってみえます。
昨年2021年に兵庫県、西脇市岡之山美術館にて開催された「堀尾昭子の現在」展では、1980年代の斬新極まる磯崎新建築空間の中に、静かに軽やかに作品同士が繊細な旋律をもって呼応しながら空間全体に響きあうような見事な世界観を顕にしていました。日々の取り組みがアーティストの表現を確たるものにし、小さな作品たちが空間の余白を含みこむように全体を凌駕するスケール感は、体験したものにしかわからない驚きであったと思います。この度、西脇市岡之山美術館のご快諾のもと、アーティスト堀尾昭子の世界をご紹介させていただきます。下記に今展の展覧会タイトルとして引用した、先般の美術展での堀尾昭子インタビューの言葉を借りて展覧会の序文としたいと思います。
『私が作品をつくるのは、まず自分のためです。目と手で自分のみたい”もの”をつくります。出来れば、つよく、深く、私なりの美しい”もの”を作りたいと願っています。雑草に美しい花が咲いているのを見るたびに、こんな風につくりたいと思います。私の作品についてよく言われる、シンプル、単純さをしいて目指しているのではなくて、線そのもの、色彩そのもの、素材でもって私の「世界を組む」ことを試みていると、自然にこのような形になりました。』
(「堀尾昭子の現在」展/西脇市岡之山美術館・堀尾昭子インタビューより抜粋})
Gallery NAO MASAKI 正木なお
堀尾昭子
現代美術家
1937年、徳島市に生れる。1959年、徳島大学医学部付属高等看護学校を卒業。看護師として徳島大学医学部付属病院に、次いで兵庫県ガンセンターに勤務する。1962年頃から作品制作を始め、1967年「具体新人展」に出品、翌1968年に〈具体美術協会〉会員となる。1970年〈芦屋市美術協会〉会員となる。1972年の〈具体〉解散後も、大阪の信濃橋画廊ほかでの個展や、京阪神のグループ展を中心に活動。木や紙、鏡のほか、一本の針金や、ペンで引かれた一本の線など、身の回りの素材の組み合わせで光の反射や陰影の効果をとらえた作品を展開した。後年は動物福祉にも力を注ぎ、1988年「動物実験の廃止を求める会(JAVA)」、1995-2013年 「地球生物会議」兵庫支部代表として活動。
2019年、「堀尾貞治・昭子の世界」展を神戸わたくし美術館にて開催。
2021年、西脇市岡之山美術館にて「堀尾昭子の現在」展開催。
2022年6月末より開催中の森美術館での「地球がまわる音を聴く:パンデミック以降のウェルビーイング」展に参加。
主要展覧会
1999 静謐の美 - 芦屋市立美術博物館
2000 芦屋の美術 - 芦屋市立美術博物館
2003 ワレモノ注意 - 芦屋市立美術博物館
2004 「具体」回顧展 - 兵庫県立美術館
2005 前衛の女性 1950-1975 - 栃木県立美術館
2012 「具体」-ニッポンの前衛 18 年の軌跡 - 国立新美術館
2020 「芦屋の時間」大コレクション展 - 芦屋市立美術博物館
2021 「今こそGUTAI」県美の具体コレクション - 兵庫県立美術館
2021 「堀尾昭子の現在」- 兵庫県西脇市岡之山美術館
2022 「地球がまわる音を聴く:パンデミック以降のウェルビーイング」- 森美術館
他、個展、グループ展多数