vol.55

Contemporary jewelry / 木場淑江 Yoshie Koba (1942-)

Primitive works : on the skin

2013.3.16-3.31

装身具を通じたカタチへのアプローチ、原点回帰。

木場淑江の芸術表現

装身具は古来からわたしたちの肌の上でその造形や色を通じて伝えられてきた、ひとつのツールであり、芸術的表現である。

木場淑江の装身具を携えると、体の内側に流れる人間本来の血と、時間を感覚する。

 

そのプリミティブでシンプルな造形、色、素材へのアプローチを眺めると付け加えていく『装飾』という言葉と相反した削ぎ落されたカタチへの探求が見えてくる。それは同時に民族回帰ともいうべき力強さを蓄えている。

 

木場淑江は1960年代より造形研究所に通いながら、現代彫刻を発表してきた造形作家であった。そのスタイルをジュエリーという装身具に転換したのは1980年に入ってからのことである。木場曰く、「常に逆行していく作業であり、マイノリティーの世界の表現の希求」である装身具の制作は彼女の中にあるマイノリティーへの憧れと自らの中に流れている"日本人としての血"との接点をみつける作業であった。木場にとって素材との出会いはおおいなる感覚の刺激であると同時に乗り越えなければならない脅威的存在でもあるのだろう。

 

1993年頃から始まった彼女の代表作の一つでもある ”こより" を用いた作品群『 Time Feding Away - 風化していく時間』は、古い和紙の書物たちとの出会いから始まった。

しかし、それは素材として用いるには余りにも強く、既に独立したものとして存在していたため、その要素を作品の中に取り入れるまでには幾度もの試行錯誤が続いたという。

「…彼等を素材として使うには余りにも強いパワーを感じました。そのまま使ったのでは作品にならなかったのです。私は紙を裂き、撚り束ね、そのエネルギーを自分の中に受け入れていく作業を行いました。手にした時の感動を外側からみつめ、一度思い切り否定するプロセスを辿ることで、なんとかカタチになっていったのです。…この工程の中で、素材を否定しながら仕上げてゆくという手法をみつけ、そうして " こより " シリーズが生まれました。私が惹かれる他の素材達も同様、否定することで受け入れ、それを繰り返しながらカタチにしていきます。」

 

 

彼女にとってのプロセスとは、向き合った時間の中に落ちていった自らの感覚がカタチを帯びていく作業に他ならない。「彫刻を始めた頃は大きな作品ばかりを作っていましたが、どんどんカタチを小さくしていったときにカタチの美しさというものはサイズの大小を問わないことに身を以て気付かされていきました。」

自然の中に観る美しい造形と、風化していくものだけが身に纏う成熟と時の経過の気配。彼女は自然のエネルギーをジュエリーという一見、真反対にもみえる表現を通してその接点を求めているようである。

 

また木場は素材と素材を繋ぐ為の金属部分の造形表現として不可欠な技術の向上も惜しみがない。それは結果として、金属素材そのものだけで存在しうるシンプルなジュエリーとして木場作品の中に見事に具現化されている。

 

様々なパッションと素材、人間本来の持つエネルギーへの憧れはまさに彼女自身の制作と一体化しているのである。それは同時に、70歳を迎えた木場淑江が重ねた年月と経験が色やカタチに現れていくことである。

 

そして今、この一人の女性アーティストの眼差し、その作品たちを通じて、触れ、身につけて知覚する、コンテンポラリージュエリーとしての表現が古来より現在、未来へと続く、最もプリミティブで身近な芸術表現として存在することを再認識するのである。

正木なお

2013年3月

木場淑江 / Yoshie Koba

 

1942 神戸に生まれる

1960 造形研究所に通い始める

     現代彫刻の発表を始める

     公募展にて、奨励賞、佳作賞を受ける

1980 コンテンポラリージュエリーを始める

1993 93 THE ART ジュエリー展 大賞受賞

1997 Gallery Lesley Crage (ロンドン)

    日本コンテンポラリージュエリー展出品

2000 日韓女性金属芸術展(ソウル,東京)出品

2001 Crafts Council(ロンドン)出展

2005 CAGNES - SUR - MER(フランス)出展

2013 gallery feel art zero(現Gallery NAO MASAKI 名古屋)個展

その他、東京、京都、大阪、神戸などで個展開催