vol.138
MA déshabillé
村田明子の世界
〜Francis De Clerck、佃眞吾と共に〜
2022.4.2(土) - 4.17(日)
Fashionというものが身体の外側を彩る世界であるとしたら、彼女の目指す世界はその真逆にあるかもしれない。
世界のトップデザイナーたちを数多く輩出するベルギー、アントワープ王立芸術アカデミーファッション科を卒業した村田明子は業界にたずさわる中、大量生産や時間軸の中で急くように変化を求める在り方に疑問をいだく。その後、中近東やアジアへの旅をしながら自分の源泉へと戻っていく時間を体験する中で、内側の変容を促すように日々自分を包み込むような服飾ブランド「MA deshabille(エムエーデザビエ)」を始める。それは、アウターとの境のないインナーワールドそのもので、同時にヨーロッパで村田が触れた創造性を刺激するヴィンテージのクリエイションを彷彿とさせる華やかさ、日本文化が内包する間=マの静謐さやハレの品格も漂わせる。
今回は、彼女のベルギー在学時代よりクリエイションの源泉でもあった、ヴィンテージセレクターであり知己の友人でもあるFrancis De Clerckのヴンテージセレクションと村田が敬愛する京都在住の木工家、佃眞吾の作品も空間に展開する。木のもつ野性味や気高さをも感じる佃眞吾の仕事は確固たる伝統や木工技術に則って制作されながらも、一方方向からではない独自のアプローチ、五感を刺激する高い創造性を併せ持つ。それは佃眞吾、その人元来の自由を愛する豊かな資質や人生時間から育まれているとすると村田明子との感性の共通項も想像に難くない。
ブランド名「MA deshabille」の「デザビエ」とはフランス語で“部屋着”を意味する。彼女が発信する衣服たちは着る人それぞれの内面に触れ、自己の中の多様性や変容する自身を受け入れることを教えてくれる。それだからこそ、Francisや佃眞吾という個性豊かなクリエイターたちとバイアスして新しい魅力を放つのである。
個々が独立していながら細胞のように溶けゆく…その甘美な体験を今から想像してワクワク心は旅するのである。
正木なお
私とクリエイティブな二人のアーティストをつなぐものを寄せ集めてみたときに見えてきた「生」、、「性」、、。
直情的に訴えかけてくる固有名詞の無い何か。
国や時代を廻遊させてくれるような乗り物であり私の今を守ってくれる結界。
歪んだ非日常の旅を味わって頂ける場になることかと思います。
MA deshabille 村田明子
村田明子 Akiko Murata
2006年アントワープ王立芸術アカデミーファッション科卒。 在学中にルイ・ヴィトンの150周年を記念するアクセサリーデザインのコンペにて大賞。Vivienne Westowoodでインターンとして働く。卒業後、スタイリストやヴィンテージディーラーを経験する中で、1950年代以前のクチュールのドレスなどに触れ、大量生産に疑問を感じるようになる。 2010年に帰国。「MA déshabillé 」をスタート。
Francis De Clerck
ベルギーに約15年間あったヴィンテージの洋服と家具の伝説のセレクトショップ「Francis」のオーナー。
デザイナーを始め、街中の御洒落な人々が通っていた注目の店。(現在はクローズ)
35年以上ベルギー中の蚤の市に通い続け、拾い上げた、洋服やジュエリー、オブジェなど、Francisが村田のために選んでくれたものたちは学生時代から服作りのインスピレーション源となっている。アーティストでもあるFrancisが描いた絵は、MA deshabilleの包装紙のデザインとなっている。
佃眞吾 Shingo Tsukuda
1967年滋賀県長浜市に生まれ、十代二十代はサブカルチャーで遊び音楽漬けの日々、人脈と思考回路の基盤を築く。手仕事を志し木工所に就職。故黒田乾吉氏の木工塾で木工芸と漆の魅力を叩き込まれる。1995年京都の伝統的な工芸に目覚め、和家具や京指物の職人修行につく。2004年工房「木工藝佃」を構え下請け職人として独立。2005年国画会工芸部国展に初入選、2007年に国展国画賞受賞。ギャラリーで個展を開催。2013年春日大社式年道具木地作製、2018年興福寺中金堂落慶式の献茶道具の製作。MA déshabillé の黒柿のボタンを制作するなど自由な気質で日々イマを生きる。