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vol.126

ALIVE_生きる様相、生まれくる表現

佐藤貢、堀尾貞治 Mitsugu SATO Sadaharu HORIO

2020.6.5 - 6.15 

《この混沌の世界に生ききる力、みつめる視座、確かな価値観を指し示す姿》
~Gallery NAO MASAKI 開催テキストより~(こちらは通常ギャラリーのみで御覧いただけるものです)

オリンピック開催に沸き立った先日までの仮世はすっかりと姿を消し、昨今の情勢は目まぐるしい速度で変化を遂げています。かつて世界は戦前であり、戦時中であり、戦後でありました。そしてほんの10年ほど前、日本から3.11という大きな激震が走りました。先人たち、そして現代においても人々や社会は、様々な体験の中で、価値観が一気に白紙になるような瞬間を味わったことでしょう。ある意味、現代のわたしたちにおける状況は、有利性だけではなく、多くの生態系とともに故意他意を問わず、有象無象に変わりゆく様は地球規模での大きなメッセージであるともいえるでしょう。

そんな中、芸術にたずさわる表現者たちの中には常に独自のベクトルでこの社会を俯瞰し、自己の内面をみつめ、物言わぬ声を出し続けるアーティストたちが存在します。

今展覧会のアーティストの一人である佐藤貢は、社会からこぼれ落ち見捨てられたものいわゆる「廃棄物」を拾い上げ「漂流物」と呼びます。そしてそれらを自身の内面やこの全体世界の映し鏡のようにとらえ、作品として蘇らせます。佐藤は2012年の名古屋市美術館で開催された現代美術の登竜門でもある『ポジション展』のインタビューの中で「世界の混沌とした問題は自分の中にある。戦争も放射能漏れも全て自分の中にある。」と答えています。彼はどんな時も自分を見つめるということを軸に生きています。今回も佐藤が近年取り組んでいる108つの十字架で構成されるシリーズ、「108 Crosses」が東西世界の共振を橋渡すように、この空間に静かな祈りの場を生み出しているようです。

そしてもう一人は、2018年に逝去した戦後前衛芸術運動・具体美術からはじまりその生の際まで美術家として生き続けた堀尾貞治。堀尾は生きる混沌としたエネルギーをその身体、時間、自己、他者、空間、全てを巻き込み、使い尽くして表現してきました。彼の主題である「あたりまえのこと」というのは、わたしたちが意識もしないところに存在する「空気」あるいは空気のような存在を意識することからはじまります。一日一色アクリルチューブから取り出す色を、拾った物や構成物の上に塗り続ける「色塗り」のシリーズとともに、今回は廃棄された建築資材パネルを譲り受け、2016年に描かれた1000点を超える平面作品「千GO千点物語」からの貴重な作品20点を発表します。

二人の芸術家の生きる様相が現れる渾身の作品。奇しくもこの時代、この瞬間にこの二人のアーティストの作品をご紹介できるのは大変感慨深いものがあります。ご共鳴いただけましたら幸いです。

Gallery NAO MASAKI 正木なお

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佐藤貢   Mitsugui Sato [1971- ] 

現代美術 Contemporary art

1971年、大阪生まれ。大阪芸術大学美術学科中退後、中国よりアジア諸国、アメリカ、中南米諸国などを放浪。1988年、和歌山市へ移住後、漂流物を用いて作家活動を再開。2005年に大阪での個展を皮切りに東京、名古屋などで展覧会を開催。2010年、名古屋に移住。

「漂流物を拾ううちに、自分こそが漂流物であることに気がついた。」と佐藤は言う。2014年、2016年、自身の数奇な人生を綴った『旅行記・前編/後編』が出版され話題を呼ぶ。本年秋に開催される奥能登国際芸術祭2020参加決定。

 

《主な展覧会》

lim Art、森岡書店、ボヘミアンズギャラリー(東京)、iTohen(大阪)、星ヶ丘SEWING TABLE COFFEE(枚方)、コロンブックス、Gallery NAO MASAKI(旧 gallery feel art zero /名古屋)など。主なグループ展、

『Art Court Frontier 2010 #8』(大阪)、『ポジション2012名古屋発現代美術』招待出品(名古屋市美術館)、『電気文化会館30周年記念事業 THE NEXT~次代を創る10人の表現者たち~』、『 ギャラリー矢田ライブvol.20+展覧会 あいちからの発信/発進 』(名古屋)など。

 

 

Gallery NAO MASAKI( 旧gallery feel art zero ) にて

<個展>2009 「佐藤貢展」, 2011 「佐藤貢展」,  2016 「揺らく形」. 2019 「108 Crosses」

<企画展>2012 「アーティストによる家具展」. 2013「 The book as ART」. 2015「小田康平 / 佐藤貢  日常、あるいは非日常の風景」. 2019「辻徹追悼展 usutsu 現」

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堀尾貞治  Sadaharu Horio [1939-2018 ] 

現代美術 Contemporary art

1939年神戸市生まれる、兵庫県在住。1965年具体美術協会会員となり1972年解散まで参加。

《主な展覧会》

2002年 堀尾貞治あたりまえのこと(芦屋市立美術博物館)、 2005年 横浜トリエンナーレ 、2005年 堀尾貞治+現場芸術集団「空気」連続82日のパフォーマンス、 2013年 Gutai: Splendid Playground オープニングパフォーマンス (グッゲンハイム美術館 /ニューヨーク) 、2014年 堀尾貞治「あたりまえのこと<今>」( BBプラザ美術館 / 神戸) 、2016年 A Feverish Era in Japanese Art/ BOZAR (ブリュッセル美術センター/ ベルギー・ブリュッセル) 、 2017年 東アジア文化都市2017京都「アジア回廊 現代美術展」堀尾貞治+現場芸術集団「空気」(京都) 、2018年 Axel Vervoord Gallery個展(ベルギー・アントワープ, 香港)

1985年頃から「あたりまえのこと」という一貫したテーマのもとに年間約100回に及ぶ無数の個展、グループ展、パフォーマンスなどを国内外で行う。2018年11月死去。

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