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vol.124
長谷川 竹次郎 Takejirou Hasegawa
「我中山河  竹次郎の憧憬世界」
2019.11.09 - 11.24

 

我の中に山河あり。
 
手を伸ばせば全てに届きそうなくらい身辺サイズにおさまった竹次郎先生の部屋。かつて番頭さんやお弟子さん、今は奥さんのまみさんや息子の清吉さんたちがいる仕事場はご自宅の庭先にあるのだが、竹次郎先生はいつも一人自室にこもり、寝起きし仕事をする。我々、長谷川家を訪れるものは必ずご挨拶にその部屋に立ち寄り、竹次郎先生に「どうぞ」といって勧められるがまま、一服もてなしていただく。
 
そこはもう異邦人の聖域。何十回と数えきれないくらい訪れていても束の間、俗世を忘れ、ホッと我を取り戻す。対面に坐した竹次郎先生の隣や背景には小さな骨董のコレクションが所狭しと並べられ、中にはご自分で手を加えられた愛らしい道具も混ざったりするから目はキョロキョロする。
作り途中のものがそこいらに鎮座しているので最近の趣も知ることができる。
 
此所もっぱら山や自然の風景のようなものが多い気がする。お尋ねすると昨年、富山の美術館で行われた竹次郎先生の展覧会の道中に、車窓からみえる立山連峰の雄大な風景に魅せられてしまったとかなんとか。そこへ子供の頃に訪れた旅の記憶が鮮やかに蘇り、熱心にスケッチをして、気づくと辺りが山ばかりになってしまったということ。小さな器物の中に見惚れてしまうくらい悠々とした風景があったり、足元に咲く小さく可憐な草花だったり、人物が滲み出る作品に、誰もが心温まり顔がほころんでしまうことだろう。いつまでも少年の心を持ち続ける稀有な人物であり、仙人のように内側の世界を探求する尊敬すべき師でもある。
 
そして今日もあの仕事部屋にいながら、心の旅路を自由に往来するのだろう。わたしたちも竹次郎先生から生まれる旅の風景をお供にしばし時空間を自由に愉しませていただくことにしよう。
 
Gallery NAO MASAKI 正木なお

 

 

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長谷川竹次郎    Takejiro Hasegawa

愛知県生まれ。金工家。尾張徳川家の御用鍔師の家系で、明治より茶道具金工家として一望齋を名乗る。二代目長谷川一望齋春泉の次男として生まれ、1968年、人間国宝・故関谷四郎氏に鍛金を師事。1980年より、長谷川竹次郎として各地で展覧会を行うとともに、1994年、三代目一望齋春洸を襲名。モダンで洗練された茶道具が多くの茶人たちの注目を集めている。

 

Gallery NAO MASAKI (旧gallery feel art zero )にて

〈個展〉2006「竹次郎博物館」 2008「長谷川竹次郎の世界~愉しき形~」 2010「竹次郎の道具図鑑」 2011「豊穣のかたち」 2014「遙かなるシルクロード」 2016「竹次郎博物館2016」

〈グループ展〉2009「エジプト帰り展」「『モビール』十人の作家による動く彫刻」 2012「うつわについて」「縁起モノ展」 2013「The book as ART;本のイメージ、あるいは抽出されたカタチ。」  2015「something new,with feel art 10」 2019「辻徹追悼展 -現-」

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