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vol.106

書 Calligraphy/山本尚志 Hisashi Yamamoto

ドアと光と音とガラスと水

2017.10.7-10.22

新しい時代や感覚の予感を感じる時がある。

日常の何処かに転がっている、ふっとアクシデントのように出会ってしまう時がある。

叢の小田康平氏に紹介され、山本尚志氏の作品を初めて見た時の笑撃もまさしくそういうものであった。そして、2 0 年くらい前にビルの地下街にある某画廊のウインドウで、奈良美智の作品と出会った時の記憶がフラッシュバックした。その当時わたしは二十代頭で、美術の美の字も知らなかったが、それは今までの絵画作品とは全く違う明らかに異質の存在だった。漫画のようなのに、絵画としてそこにある存在。そして光を放っていた。

 

山本氏の書は、一見して、書道という世界から大きく踏み外した様相だ。そのグニャグニャで柔らかな感覚は、日々の中に存在する現代の普通の思考から生まれ、オタクに一歩も二歩も近く、非現実的であり同時に超現実とも言える、書の表現を愛し、追求し、思考と即興の積み重ねのナレノハテの「書」である。「じゃあ、アンタ、普通って何?書って何?!」と問われている様でもある。かつて先人たちが遺してきた数々の書、そして今こうして、呼吸して、イキイキと書き綴った現代の書。

 

常識という概念を打ち破る手法、新しい価値観へのアプローチ、それが山本尚志の書という存在なのかもしれない…と、やっぱり最後はニヤッと笑うのだが、同時にこうして空間の中に置かれた時の迫力は、間違いなくあるのだから侮れない。

このアクシデントをここに訪れた希少な方たちと共有できることに感謝を申し上げつつ、今後この稀有なアーティストがどのように時代の波をかいくぐりイキイキと光を放つのか、共犯者のごとく見守っていただきたいと切にお願いしたい気持ちでいっぱいである。

正木なお

2 017年 10月

 

-Artist Statement-

ドアがそこにあり、誰かが開けたり閉めたりしている。そこから光が漏れて、音が聞こえてくる。

今回、私は日々の生活を「書いた」。家の中では、遠くから差し込んでくる光がガラスを通過して 、その中でいつも通りの生活がある。コップの中には水が汲んである。

私の生活はドアと光と音とガラスと水で出来ている。最後に私がドアを開けてどこかに出ていく。

書家・山本尚志

 

山本尚志 Hisashi YAMAMOTO/書家 1969年広島市生まれ

幼い頃に左利きを右利きに直すために習字塾に通うことになった私は、最初、横棒一本だけを何百回も書かせられる。

高校生になり、中国の古典臨書に親しんだ私は、習字塾で習う字が、ただ一人の字を真似しただけのものだと気づき、退会。

1988年、東京学芸大学の書道科に進んだ私は、直後に井上有一の作品に触れ、古典臨書をやめる決意をする。自分だけのナマの字を書くことを決め、20歳の時に自室にて「山本尚志書家宣言」を行い、以来、書家を名乗る。ウナックトウキョウにて井上有一カタログレゾネの仕事に従事した後、有一から離れる決意を固める。

1993年、広島に戻り学習塾に就職。しかし、1年半後に倒産の憂き目に遭い、1995年に学習塾を独立開業。教室をアトリエにし、制作活動に10年間没頭。2004年に海上雅臣氏に井上有一を顕彰する「天作会」の設立を打診され、作品発表の機会を得る。

2015年にウナックサロンにて初の個展「マシーン」

2016年には作品集「フネ」(YKGパブリッシング)、個展「flying saucer」(東京・ユミコチバアソシエイツ)

2017年個展「Speech balloon」(富山・ギャラリーNOW)、個展「バッジとタオルとダンボール」(東京・ビームスジャパン・Bギャラリー)