vol.68
中西洋人 Hiroto Nakanishi
その姿
2014.3.8-3.23
空間全体に満ちる、中西洋人の静かで重厚感のある美しい仕事。
それは、朽ちた木々たちが黙して語る、生命のかたちが放つ気配である。
初の発表となる、ひとつの木塊から生まれる家具の作品。
じっとみていると、素材という言葉以前の、木々自身が歩んだ時間や個性が色濃く浮かび上がってくる。
朽ちた丸太から生み出される、その姿。
向かい、見つめ、引き出し、引き出される、その姿。
歳月を経た素材はまるで厳しくも優しい師の様に、
その身体に刻まれた年輪や朽ちたウロのなんたるかを惜しげなくもみせる。
若者は導かれ教えられるように素直に、厳しく自身の身を澄まし、その美しさを選び抜き、
往年の慎ましく、簡素で静謐な器たちの姿に掬いとる。
「僕はただ、今美しいと思うものを切り取り、当込んでいるだけで、まだ精神性は伴っていません」と中西洋人は頭を垂れる。
宮沢賢治が農民芸術概論の一節で、『求道それはすでに道である』と唱えたことが思い出された。
29歳の若者が歩む姿、また立ち向き合うさなかにみつける視点、そのものが清々しくすでに美しい。
それ故か、中西の作品は、高度な技から生まれる熟練の雰囲気を漂わせながらも、常に清廉な美しさを帯びている。
すでに蓄えられた技術力におごらぬ、誠実な仕事、それにもまして感性の高さと溢れ出るひた向きな熱を感じ、この若き作家のこれからを予感し、ここに立会える現在(イマ)を感じ身震いを覚えた。
正木なお
中西洋人 Hiroto Nakanishi
愛知県名古屋市生まれ、滋賀県北部在住。木工を学び、家具制作を始める。2008 年に工房開設、素材をみつめ制作を続ける。2011 秋、滋賀県へ移住
gallery feel art zero (現Gallery NAO MASAKI)にて
<企画展>
2012 「貌 KATACHI」
2013「something new,with feel art 10」